Zenei ajánlás ~音楽の捧げもの~

(サヴァリア交響楽団/井﨑正浩指揮による初CD)

Zenei ajánlás ジャケット写真(表)

サヴァリア交響楽団(ソムバトヘイ市交響楽団)と芸術監督・井﨑正浩との初めてのCDが完成しました。
これはオーケストラ・プロ化創立25周年を記念する行事の一環としてレコーディングされたもので、プログラムもこのオーケストラの様々な特徴や可能性を披露できるよう、ヨーロッパの様々な作曲家の作品から採られています。いわば井﨑のタクトとこのオーケストラによる”音楽の旅””音のパレット”と呼ぶに相応しいものとなっています。

以下に掲載するのはジャケット内の解説文(英文:井﨑正浩による)からそのエッセンスを日本語訳したものです。今回このCDを製作するにあたって、ジャケットの表紙(クリムト作”Die Muzik”「音楽」の意)の選定から、ジャケット内解説文まですべて井﨑自身の監修によるものとなっています。


Zenei ajanlas ~音楽の捧げもの~

演奏 : サヴァリア交響楽団(ソムバトヘイ市交響楽団)

指揮 : 井﨑正浩

①エルケル・フェレンツ/「祝典序曲」 (9'22")
  ハンガリー国民楽派の祖・エルケルの作品はそれまでのイタリア・オペラなどの影響から脱し、ハンガリー人としての独自の作風を生み出して創作し、後のバルトークやコダーイに大きな影響を与えました。いくつかのオペラや管弦楽曲を書きましたが、特に現在のハンガリー国歌は彼の作曲によるものです。
  この「祝典序曲」は1877年に国立劇場の50周年記念式典のために書かれた自由な作風のものです。後半第二の国歌となる旋律が盛り込まれています。コンクール後にハンガリーの作曲家の多くの作品を指揮するようになってから、私もこうしたハンガリー音楽にある種の身近さを感じるようになって指揮するようになりました。

②フランツ・リスト/交響詩「レ・プレリュード」 (16'29")
  ピアニストとしてだけでなく、指揮者、作曲家としてもリストは音楽界に大きな革命をもたらしました。特に交響詩と言うジャンルは彼によって発案されたものです。
  ハンガリー人の血を受け継ぐ彼ですが、本人はハンガリー語が話せなかったそうです。しかしながら彼の音楽には、ハンガリー音楽に独特の強いリズムや、メロディー感覚を感じ取ることができます。

③W.アマデウス・モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲 (6'48")
  モーツァルトの音楽の特徴は、その彼の性格と同じく、明るく、屈託のないものですが、書かれた音の一音一音には彼の天才的なひらめきに裏付けられた絶対的な役割があって、どの音もおろそかにできません。
オペラ「魔笛」は彼の、おそらくもっとも音楽的に充実した晩年に書かれた作品で、メッセージ性の強いものです。この序曲を演奏するのことは、その解釈においても、オーケストラ、そして指揮者にとって大きなチャレンジです。

④ピエトロ・マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲 (3'23")
  劇場指揮者としてスタートした彼の音楽キャリアでしたが、後に大成功したこのオペラの作曲によって、彼はその名が知られるようになりました。その様式は「ヴェリズモ」と呼ばれるもので、日常生活に根ざした現実的な台本を、劇的な音楽効果と単純な音楽的手法によって音楽化するものでした。
  この曲は大変に美しいものですが、これから始まる悲劇を逆に暗示するものでもあります。そうした雰囲気を演奏で伝えたいと思っています。

⑤ジャコモ・プッチーニ/歌劇「蝶々夫人」三重唱の“ラルゴ“ (2'37")
  長崎を舞台にした悲劇という題材で我が国でももっとも知られたオペラのひとつですが、初演は失敗に終わったそうです。当時にしてみれば日本の旋律を取り入れた東洋的な和声の響きは、当時の聴衆の耳には斬新過ぎたのかもしれません。 その中で第二幕第二場で歌われるこの三重唱は、他のアリアと同じようにプッチーニのロマンティックな音楽を如実に表わしています。
  蝶々さんの不幸を嘆くスズキ、後悔にさいなまされるピンカートン、それを叱責するシャープレスによって歌われるものですが、以前御一緒したソプラノ歌手・佐藤しのぶさんのアイデアで、オーケストラのみで演奏しても、間奏曲的な雰囲気ですばらしいもののため、今回特にこのCD用に録音しました。

⑥ジュゼッペ・ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲 (7'48")
  プッチーニと並ぶイタリア・オペラの巨星ヴェルディの本領は、情熱的な激性の音楽にも発揮されます。特にそのオーケストレーションはワーグナーの手法も取り入れた大胆なもので、高いアンサンブル能力を要求されます。
  この録音のプレイバックを聴いたハンガリーの友人たちが「正浩の音楽はこうしたオペラのものに良く表れるね」と言っていました。皆さんはお聴きになってどんな印象をもたれるでしょうか?

⑦~⑧エドゥアルド・グリーグ/組曲「ペール・ギュント」より“朝”、“山の王の宮殿にて” (4'20" / 3'19")
  ノルウェー国民学派を代表するこの作曲家の特徴は、豊かな自然を髣髴とさせるような深い味わいと、自身の生活がそうであったように幸福感に満ち溢れたものです。
  ‘98年2月にこのサヴァリア交響楽団がブダペストで客演した時にこの組曲を演奏しましたが、大変な好評であったため、今回このCDの曲目に取り上げることにしました。“朝”の木管のソロイスティックなやり取りと、「山の王の宮殿にて」の従来の演奏にはない遅いテンポからだんだん速くなっていく曲の盛り上がりをお楽しみください。

⑨アレキサンダー・P・ボロディン/歌劇「イーゴリ公」から“だったん人(ポロヴェッツ人)の踊り” (12'22")
  ロシア国民楽派<五人組>のひとりに数えられるこの作曲家は、終生化学の研究に携わった人で、余暇を利用して作曲を行っていました。そのためしばしば中断した作曲ですが、このオペラは台本も彼自身が執筆した自信作でした。
  第2幕で演奏されるこの曲はバレエや合唱を含む饗宴の場面で、いくつかの踊りの音楽の組み合わせと、合唱及びソロの旋律の組み合わせとで成り立っています。もちろんこのままでも演奏される機会が多いのですが、今回はほんの一部、オーケストラのパートに合唱の旋律も加えて、よりメロディックになるよう工夫してみました。様々の音のパレットをお楽しみください。

<解説:井﨑正浩>

<録音データ>

2000年1月10日~13日

ハンガリー・ソムバトヘイ市・バルトーク・ホールにて収録

製作;BCC-Budapest 録音;ビラ―・イシュトヴァ―ン 技術;アポシュトィディス・アンナ

(録音時間67分03秒)
Zenei ajánlás ジャケット写真(裏)

<CDの購入について>

残念ながら日本国内での販売の予定は今のところありませんが、このサイトを通じて予約後購入することが可能です。価格は¥3,000(送料を含む/予価)を予定しております。井﨑正浩後援会を通じてお申し込みください。

CD購入予約メールはこちらへ